COLUMN

VOL.5 小林 武史×櫻井 和寿 2016.07.12

「Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016」のテーマ曲として、Bank Bandが新曲をつくりました。作詞、作曲を担当した二人がこの曲に込めた思いを語ります。そして、今までの「ap bank fes」とは違う、本イベントのライブのあり方についてまで話が及びました。

「みんなに口ずさんでもらえるような楽曲をイメージして。」

VOL.5 小林 武史×櫻井 和寿 対談風景

小林:今回の Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016 で、できればBank Bandとして1曲やれないかなという思いはあってね。今回のプレイベント、どんな感じになりそうなイメージ持ってる?

櫻井:つま恋に集まっていたような人たちが、東北の街にエールを送りたい気持ちを持って石巻に遠征してくるような、そんなイメージがありますね。

小林:石巻行ったりとか、いろんな旅をしながら、ふとイメージが浮かんで。なんとなくサビのメロディを作って、デモテープを櫻井に聴いてもらったんですけれど、どうだった?

VOL.5 小林 武史×櫻井 和寿 対談風景

櫻井:まだ歌詞のない状態で聴いた時に、このメロディをお客さんが笑って歌ってる姿が想像できました。ただハッピーに笑って歌うっていうんじゃなくて、紆余曲折して辿り着いた今を肯定しながら、これでいいんだって確認しながらこぼれる笑顔というか。

小林:そんなような思いを持ってほしいと思って作ったところがあったから、ちゃんと伝わっててよかった。「carry on, carry out」という英語から始まるところも最初は意外だったけど、だんだん馴染んできて。僕の中でもこのサビはすごく響いてくることになったんだよね。あえて、ちょっと高らかなイントロが始まって、ずんずんいくみたいな感じのAメロなんだけど、そこの歌詞がすごく、なんかこう、いいんですよね。「錆び付いた空を 赤い目をした僕らが見てた」っていうところから始まるんだけど。

櫻井:ap bank fes で歌うってこともあったから、やっぱり震災があったってことは刻まないといけないなと思った。だからといってリアルすぎる描写も避けたいなって思いました。

小林:あっけらかんとするほど音は強いところに、「錆び付いた」とか「赤い目」とかタフな言葉が入ってくる。タフといっても、腕力が強いタフではなくてね。

VOL.5 小林 武史×櫻井 和寿 対談風景

櫻井:Bメロの歌詞は、「登り下り」と坂道に例えているんですけれど。Mr.Childrenの歌詞でも、「こういう捉え方があるよ」って、いろんなことに人生を例えることがあるんだけど。被災された方にしか分からないことはあるし、そう思うから軽率に、きれいごとは言えない。同じ気持ちになることはできないけれど、分かりたいと思う。とにかく今を肯定するっていうか、それだけをすごく大事に書きたいなと思ったんです。来年の Reborn-Art Festival の時に、関わってくれる現地の方たちとか、そこに住んでる人たちがこの曲を歌ってくれることをイメージしながら作っていました。

「『こだま、ことだま。』というタイトルに込められたいろいろなこと」

VOL.5 小林 武史×櫻井 和寿 対談風景

櫻井:タイトルは最後まで悩んで。最初の「carry on, carry out」っていうのが、こだましてるようなものなので。音の響きだけでいうと「carry on, carry out」って、そんなに言葉が飛び込んでこない。でも日本語で訳すと「継続して、やり遂げる」ということで、日本語でちゃんと噛みしめた時に、結構重い言葉だなって思ってる。あと、隠れたメッセージなんですが、「こだま」と「ことだま」の違いは、「と」が入ってるかいないかっていうこと。この「と」っていうのは、何かと何かをつなぐもの。その出会いの場所っていうか、人と人を繋げるっていう一番の目的というか、それを隠れテーマで入れてみたかった。だからそれを森本(千絵)さん※ にも伝えてジャケットにも表してもらって。

小林:「&」だよね。最終的にデザインも、ロックが豊かだった60年代の後半とか70年代の多様な創造性みたいなものが溢れて出てくるっていう、そういう多様なものが深く、鋭く、いろいろな表現してていいんだっていう、そういう思い切りの良さを込めたいというのはあったんですよね。

VOL.5 小林 武史×櫻井 和寿 対談風景

櫻井:森本さん、最初なんて言ってたんでしたっけ。

—「郵便配達の人が丘の上でラッパを吹いているイメージ」。

櫻井:(笑)、でもすごいぴったりだなあと思って。

小林:Bank Bandも含めてビートルズとかそういうのに影響受けたミュージシャンたちが奏でてるっていう感じと、一方で、櫻井和寿という、言葉を歌にして紡ぎ出していくという、もしかしたら60年代、70年代のフォーク的な気配と。そういうものが融合してるって感じもしてる。いろんなものが、種をもらったりしながら異化して、普通でいうと出会わなかったようなジャンルを超えて、来年の Reborn-Art Festival っていうところで、いろんな出会いが起こるといいなと思ってるんですけどね。

櫻井:その、丘の上でラッパ吹いてるのがミュージシャンじゃないところも良くて。ラッパを吹いてどこかに高らかに響かせて終わるんじゃなくて、吹いてる人が郵便屋さんだから、ちゃんとそのあとに、一人ひとりのところに届けにいくっていうか。

小林:あと、このCDには一つ取り組みがあって、前から櫻井がアイデアとして持っていたんだけど、地元の人たちに手仕事として関わっていただくという試みをやってみることになりました。手仕事ということもあって、製造数に限りがあるので会場での販売なんですけどね。会場に来る人は楽しみにしていてください。

  • ※森本千絵 コミュニケーションディレクター、アートディレクター、goen°主宰。今回の「こだま、ことだま。」のジャケットデザインを手がけた。

「Reborn-Art Festival に向けての Bank Band の在り方として」

VOL.5 小林 武史×櫻井 和寿 対談風景

小林:多様なものがいろいろ存在するといいねという思いを込めた Reborn-Art Festival なんだけど、Bank Bandのバックの務め方も今までとは変えていて。あえて、ずっと櫻井が生ギター弾いたりコーラスやったりっていうのではなく、櫻井なしでだけど、Bank Bandとして演奏していく部分を作るよう考えてるんだよね。

櫻井:僕の気持ちとしては、ap bank fes という音楽のイベントではなくて、来年、本祭として牡鹿半島で行う「アートフェス」に一番の焦点が当たって欲しいという気持ちがあって。今まで僕はBank Bandの中でいろんなシンガーの方々を迎えてやっていたんだけれど、つま恋でやっていた ap bank fes っていうのは、もちろんその良さもあるんだけど、なんていうんだろうな...

小林:一つの中心がすごく明確だったよね。櫻井や、僕なんかもそうだけど、Mr.Childrenとかを通して繋いでいくっていうか。多様なものがいろいろ存在して、人と人の新しい出会いや反応しあうような場所を作ることでこれからの未来に繋げていけたら、というような思いが込められているのが Reborn-Art Festival。今年はそのプレイベントとして行われるわけなんだけど、そんな流れもあって、いわゆるゲストシンガーを迎えるハウスバンドとしてのBank Bandの在り方はどうあるべきかを考えたんだよね。

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櫻井:これまでの ap bank fes には、一つのトーンというか、カラーとか雰囲気がありましたよね。だけど、来年の本祭では、いろんなアーティストの方が作品を作るわけで、やっぱりそこは、そのアーティストの人が色をつけるべきだし、空気を作っていくべき。同じように今回のプレイベントも、結構個性の強い人たちが出演してくれるじゃないですか。

小林:あえてっていうところもあるんだけどね。多彩なアーティストに声をかけさせてもらって、来てくれることになってる。

櫻井:そこにMr.Childrenとか僕の空気みたいなものを、あんまり影響させたくないっていうか。そのシンガーの人の作り出す世界をダイレクトに味わって欲しいし、ちょっと言い方はおかしいかもしれないけれど、その世界をあんまり邪魔したくないな...って思ってますね。

小林:Mr.Childrenのメンバーもそこのところを考えてくれて。だから出演順も考えて、あえて真ん中あたりにしてね。

櫻井:今まではMr.Childrenがフェスの芯みたいなものとしてずどんとあったと思うんだけど、今回はそんなふうに大トリとして存在するんじゃなくて、そのイベントの一部として、来年のアートフェスに繋がっていくプレイベントの一部として在りたいという気持ちですね。

VOL.5 小林 武史×櫻井 和寿 対談風景

小林:とりあえず、そんな感じでBank Bandのリハーサルは始まっていて、その櫻井の思いとか、みんなに話してからリハーサルが始まったんだけど、それはそれで新しいことがはじまり出したなっていう感じでみんな捉えていると思うんだよね。みんな第一線のミュージシャンたちだし、それはそれで楽しめていると思うから。

櫻井:本祭である Reborn-Art Festival そのものに一番スポットライトが当たるようにしたいと思ってるし、Mr.Childrenのムードとかカラーみたいなものよりも、むしろ本祭のカラーに近いものにしたいっていう気持ちが強いです。だからMr.ChildrenはMr.Childrenとして、そのイベントの中の一つのアート作品という感じで出たいですね。

小林:今回、オープニングもちょっと凝ったことやろうと思ってて。地元の人たちも巻き込んだ内容を考えてて。櫻井にも頼みたいと思ってるんだけど、どうかな。

櫻井:オープニングは僕も参加します。

REBORN ART FESTIVAL × ap bank fes 2016