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Reborn-Art ONLINE
鹿のゆくえ
交信・声なき声を聴くためのレッスン


REPORT #01
交信1 : 石巻 — それから

配信日 : 2021年2月13日(土)

第一部 : 吉増剛造(詩人)

第二部 : 青葉市子(音楽家)

Reborn-Art Festival(RAF)2021-22 の
プレイベント『Reborn-Art ONLINE』。
2021年2月13日、次回 RAF 夏会期のキュレーター・窪田研二の企画による
『交信 ― 声なき声を聴くためのレッスン』と題された
ライブ配信プログラムの第一弾が行われた。

交信1 : 石巻 — それから

今回登場したアーティストは、第1部が詩人の吉増剛造、第2部が音楽家の青葉市子。 前回のRAF2019で鮎川エリアのキュレーター・島袋道浩に招かれ、牡鹿半島南端の鮎川に滞在し、創作活動を行った二人だ。

吉増は前回の会期中、旧商店を造り変えた《詩人の家》で制作を行い、その近くの民家で客人をもてなし、車で10分ほど離れたホテルニューさか井(現・島周の宿さか井)の一室《room キンカザン》では、金華山と海を望みながら詩の制作に挑むという生活を送っていた。 窓ガラスに直接詩を書きつけたその部屋は、会期終了後も常設公開されており、吉増は毎月のようにこの部屋を訪れている。

一方の青葉は前回、鮎川で見つけた鯨の骨や貝殻や音、自身の声やドローイングなどを民家にちりばめたインスタレーション《風の部屋》を展開。 サウンド作品《時報》は石巻市の時報として公開後、CD-Rに収めた。 また、オープニングライブ 『転がる、詩』 などに出演し、さらに、近隣住民や来場客たちが集った『詩人の家 BAR』ではしばしば手料理を振舞った。

さて、夕暮れ前の17時。 RAF 事務局長・松村豪太の紹介で現れた吉増は、「驚異的な景色でしょう」と、窓の向こうを指差した。 震災時は引き波で海底が露出した海峡、その向こうには震源に最も近く、東奥三大霊場の一つに数えられる金華山がガラス越しに見える。 この部屋を『透明な卵』と喩える彼は、ここで詩を書くことを「心の内側から叩く」ようだと言う。

吉増はこの日の朝、この部屋で、青葉市子の見た夢の話(『新潮』2021年3月号に掲載) に因んだ映像 「 石巻の網地島の先に、妣なるあたたかい海が表情を見せはじめた 」 を撮った。 その映像の一部を流しながら、鮎川で感じた明るい海について思索を巡らせる。

2019年、鮎川から網地島へ船で渡った際に、吉増は自分が夢のような南国の島に近づいているかのような感じがしていたという。

そして2020年、『石巻学』 5号の文学特集を読んでいた吉増は、坂口安吾が鮎川を訪れて記した紀行文(本間英一が引用)の一節に出会い、仰天する。

「(南下して)ゆくにしたがって明るく(中略)南国的な植物地帯へ次第に踏み込んで行きつつあるような気持ちにさせられる」という坂口のビジョンが、折口信夫が志摩半島で海の彼方に見たという魂の故郷のビジョンとつながったためだ。 さらに青葉の見た夢も沖縄の海の近くを舞台にしていた。 すべてが明るい海のイメージへ誘われていた。

「明るい海が呼びかけているような声を聞いている」。

それが、自分が鮎川を度々訪れ、この部屋へ帰ってくる理由だったのだと、それを今朝わかったのだと吉増は語った。

誰しもが、それぞれの明るい海を感じなければならないと吉増は語りかける。 そのありかは特定の場所とは限らない。 鯨の通る道だって緯度経度で計れはしない。 胸の中に『明るい海の入口』があり、さらに心の海の道が奥にある。 心の中で思い馳せることが大事なのだ。

震災や新たな厄災が起こる極限的な煉獄の中で、見えない、聴こえないものを想像し、感知することの大切さ。 それを2年近く鮎川に通い続け、ようやく発見した詩人の弛まぬ精神に感動をおぼえた。

日が暮れてから都内某所で始まった第2部は、青葉のライブ。 こちらの窓ガラスには金華山や鹿、骨になって海を泳ぐ鯨などが青葉によって描かれ、彼女の周りには、鮎川から送られてきた鯨の骨、海水、砂などが配されていた。 最初の曲は『Dawn in the Adan』。 アコースティックギターのフィンガーノイズがウミネコの鳴き声のように響く。

鮎川の浜で吉増と合奏した『星のプレゼント』を含む3曲を演奏して、青葉は語り始めた。 RAF2019 の後も鮎川で出会った鯨のことが体の中にあったこと、鯨とともに南へ下っていったこと。 そして、「私たちがいるところは本当は北でも南でもない、東でも西でもない、命がただそこにくるくる、くるくると波打ち際で、波打ち際で……」と吉増の言葉に重ねた。

終盤に奏でられたのは、小林武史が作詞・作曲した HARUHI の『ひずみ』のカバー。 青葉の澄んだ歌声によって再発見するその歌詞は、どこか震災後の私たちと重なるようだ。 蒼い海の底のような空間の中で、ラストは『海底のエデン』。 演奏し終えると、青葉は立ち上がり、ガラス窓に白いペンで、『石巻—それから』と書いた。

見えないものを見ようとし、聴こえないものを聴こうとし、交信し合う二人のアーティスト。 その表現に意識がつながり、想像がシンクロしたり飛躍したりと掻き立てられた2時間。 その数時間後に起きた大きな地震も、無関係ではないような気すらした。

文 : 小林沙友里(アートライター)


【 青葉市子の演奏曲(全10曲順) 】
Dawn in Adan
星のプレゼント
血の風
ひかりのふるさと
Easter Lily
羊のアンソニー
アンディーヴと眠って
ひずみ
アダンの島の誕生祭
海底のエデン

Reborn-Art ONLINE
交信 ― 声なき声を聴くためのレッスン
交信1:石巻—それから

第一部 / 吉増剛造
・ お話 : 吉増剛造
・ 進行 : 松村豪太
・ 映像・配信 : 濱田直樹(株式会社KUNK)、佐藤貴宏
・ 協力 : 島周の宿 さか井
・ Special Thanks : 青葉市子、島袋道浩、齋藤かつ子、梶原茂子
詩人の家・《room キンカザン》に来てくださったみなさま

第二部 / 青葉市子
・ 音楽 : 青葉市子
・ 映像・配信 : 野口羊(屋上)、小林舞衣(屋上)、郷田彩巴(屋上)、城啓介(屋上)
・ 音響 : 吉田誠
・ 照明 : 佐藤円、関 瑠惟
・ 装飾・衣装 : 横山キミ(NEWSEE)、平松隼人(NEWSEE)
・ 舞台監督 : 高野洋、横野哲郎(ONE LIVE)
・ 協力 : 株式会社 KURKKU
・ 制作スタッフ : 棚橋万貴、白石肇(株式会社KURKKU)、坂口千秋、志村春海、竹内久古、水田紗弥子
・ Special Thanks : 吉増剛造、鮎川のみなさま

・ 企画 : 窪田研二
・ 主催 : Reborn-Art Festival 実行委員会、一般社団法人APバンク

OUTLINE

開催概要

Reborn-Art Festival 2021-22
— 利他と流動性 —

【 会期 】

オンライン : 2021年1月6日(水) 〜
夏 : 2021 年 8 月 11 日 (水) ~ 2021年 9 月 26 日(日)
春 : 2022 年 4 月 23 日 (土) ~ 2022年 6 月 5 日(日)
※会期中メンテナンス日(休祭日)を設けます。

【 メイン会場 】

ー 夏 ー
2021年
石巻市中心市街地
牡鹿半島(桃浦、荻浜、小積浜、鮎川、and more...)

ー 春 ー
2022年
石巻地域

【 主催 】

Reborn-Art Festival 実行委員会
一般社団法人APバンク

【 助成 】

文化庁 国際文化芸術発信拠点形成事業

【 翻訳 】
小山ひとみ、呉珍珍(中国語簡体)、チン ユホウ(中国語繁体)

【 Web Direction 】
加藤 淳也
(PARK GALLERY)

この情報は2021年3月20日時点のものです。
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