「転がる、詩」ライブレポート(3)

Photo by Takehiro Goto

 

そして小林から “みんなの暑さも軽く吹き飛ばしてくれる” との紹介で宮本浩次が登場。第何次かの黄金期を迎えているともいえる圧倒的な宮本のエネルギーと存在感にすぐに会場は総立ちとなり一気にロックバンドの佇まいへと変貌していく。

まずは “これぞ宮本節” ともいえる名曲「孤独な旅人」からスタート。
考えてみればエレファントカシマシは80年代にデビューしたバンドだ。
そんな大ベテランが未だ(なお一層)これほどパワフルなことに驚きを禁じ得ない。宮本はステージを左右に移動しながらか細い四肢からのアクションで会場にそれまでとは違った震えをもたらしていく。続く「風に吹かれて」(1997年)では椎野恭一のドライブしていくリズムが曲を引っ張っていきサビでは観客全員が高く手をかざす。そして当時エレファントカシマシをプロデュースしていた小林と、レコーディング時にニューヨーク同時多発テロを体験したというエピソードから披露された「普通の日々」。そんなバックストーリーを踏まえて聴けば、日常を描いた歌詞が逆説的にまた違った情景として響いてくる。

続いては、エレファントカシマシが2008年にアルバム『STARTING OVER』でカバーした荒井由実の「翳りゆく部屋」。もし原曲を知らない若い世代ならば、まったく宮本自身の曲だと思うのではないかと感じるほど完璧な宮本ワールド。そして日本的なエレジーの雰囲気が漂う昨年のソロ・デビュー曲「冬の花」と、同じくソロ曲でパンキッシュなリズムの「昇る太陽」を挟み”非・エレカシ”の宮本浩次像を見せつけたあとには「あなたのやさしさをオレは何に例えよう」。

思えばロックとは “歪(ひず)みのアート化” という側面を持っている。
それまで “汚れ” や “間違い” とされていた “歪み” の “美しさ” を発見した芸術革命だった。それはギターだけでなくボーカルに於いてもいえることだ。いわゆるオペラ的な美声ではなく、優れたロックボーカルはどこか必ず “歪み” を内包している。矢沢永吉しかり、椎名林檎しかり、櫻井和寿しかり。そして、やはりこの宮本浩次もまた紛うことなきロック・ボーカリストだった。“エビバデー!” となんども観客を煽りながら”愛する力を求め続ける勇気を/本当の姿を見つける旅へ行こう”というシンプルなメッセージが痺れるような歪み成分を持つ宮本の声で朗々と響き渡る。

 

Photo by Takehiro Goto

 

続く「今宵の月のように」では、要所に効果的に入ってくる小林のピアノ・フレーズがエレファントカシマシとは違ったアレンジとして新鮮に響く。ラストはやはり代表曲「悲しみの果て」。“悲しみの果ては/素晴らしい日々を送っていこうぜ”とふりしぼるように歌う宮本の声はこのライブ、ひいては RAF が RAF である意味を代弁してくれていたようにも思えた。


Text:Takeshi Kitagawa

 

M1:孤独な旅人
M2:風に吹かれて
M3:普通の日々
M4:翳りゆく部屋
M5:冬の花
M6:昇る太陽
M7:あなたのやさしさをオレは何に例えよう
M8:今宵の月のように
M9:悲しみの果て

 

「速報! Reborn-Art Festival 2019」
8/18(日)午前10:00からWOWOWにて無料放送
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