© Reborn-Art Festival 2024
儚さをあらわす彫刻
淡(あわ)
久住有生 / NAOKI KUSUMI
「全ては、ほんの一瞬の出来事である。何億年も前から続く循環も進化も永遠ではない。一喜一憂する毎日も。生まれてくる事は、儚い」(久住有生)
久住有生は伝統的な左官技術とオリジナリティ溢れるアイデアを組み合わせ、国内外で活躍する左官職人。今回は桃浦の海を一望できる高台に、今にも弾け出しそうな鮮やかな青の淡(あわ)を多数点在させ、新しくも懐かしい、不思議な雰囲気に包まれた場所を創造しました。
久住がこの土地の暮らしや自然を意識しながら選んだ素材は土とセメント。それらを混ぜて作った大小の球体は相当の重量があるにもかかわらず、職人技によって発砲スチロールのごとく軽いように見えました。会期中には地面に転がる球体を鑑賞者が手に取り、それをまた思い思いに置いていました。鑑賞者が見て、触れて、感じて、そして記憶を残していくことで、毎日変化する風景がそこにありました。
久住有生
NAOKI KUSUMI
1972年、兵庫県淡路島生まれ。祖父の代から続く左官の家に生まれ、3歳で初めて鏝(こて)を握る。高校3年生の夏に、「世界を観てこい」という父の勧めで渡欧したスペインにて、アントニ・ガウディの建築を目の当たりにし、その存在感に圧倒され開眼、左官職人を目指す。日本に戻り、左官技術を学ぶべく18歳からさまざまな親方の許で、本格的な修行を始める。1995年、23歳の時に独立し「久住有生左官」を設立。重要文化財などの歴史的価値の高い建築物の修復ができる左官職人として、国内だけにとどまらず、海外からのオファーも多い。伝統建築物の修復・復元作業だけではなく、商業施設や教育関連施設、個人邸の内装や外装を手がける。現場では企画段階から参加することが多く、デザイン提案なども積極的に行っており、伝統的な左官技術とオリジナリティ溢れるアイデアが、国内外での大きな評価につながっている。また、どの現場でもその土地の暮らしや自然を意識しながら、土や材料を選び、ときには地元の暮らしの調査をしてから工事に入るなど、それぞれの風土も大切にしている。通常の仕事の他にも、日本の左官技術を広く伝えるべく、ワークショップや講演会を国内外で開催している。
桃浦エリア
自然豊かな牡鹿半島の最初の作品展示エリアとなる桃浦は、牡蠣の養殖が盛んな漁村。今回の会場は2018年に廃校となった旧荻浜小学校です。その校庭と防潮堤付近にはこれまでのRAF作品も。RAFオフィシャル宿泊・研修施設・もものうらビレッジも近くにあります。